ホーム > 埼玉人生100年時代の楽しみ方研究所 > 学びを還元! 大学の市民公開講座で「地域デビュー仲間」に出会う
<画像提供:獨協大学>
「昔はあんなに嫌だった勉強なのに、大人になった今なら楽しめる。」という声が多数あります。
子どもの頃と違い、自分の好きなことを自由に学べることや、同じ興味・関心を持つ人と出会えること、そして何より青春時代に戻ったような気分にもなれるのも「学び」の魅力です。
自身の知識を深め、新たな居場所を見つける機会になる大学・短期大学の市民公開講座(オープンカレッジ)。
実際に受講された方の体験談を交えて紹介します。
<画像提供:日本薬科大学>
埼玉県内には多くの大学・短期大学があり、それぞれ学校の特色にあった市民公開講座が開催されています。
音楽大学*1)では、音楽史講座や社会人向け夏休み演奏技術講習。医科大学*2)では、病気にまつわる医師の講演。その他にも朗読講座、ダンス講座、料理講習など趣味を深められる講座や、1日限りの講演、通年講座など、各校でその内容は様々です。
*1)東邦音楽大学
*2)埼玉医科大学
<埼玉県大学開放授業講座>
「大学で学ぶ」というとどこか敷居が高いように思えますが、楽しそうな大人向けの講座が目白押しです!
その一部を紹介しますので、ご近所の大学でもおもしろい講座がないか、ぜひ探してみてください。
聖学院大学(埼玉県上尾市)
獨協大学(埼玉県草加市)
文教大学(埼玉県越谷市)
「大学=難しい勉強」というイメージとはまったく違う体験ができそうです。
一方で、「趣味ではなくしっかり学びたい!」という方には、「立教セカンドステージ大学」(東京・池袋)などもあります。満50歳以上の方が受講できる大学で、期間は1年です。入学試験もあり、修了すると「履修証明書」を受け取ることができます。必須科目と選択科目があり、条件を満たせば現役大学生と同じ講義を受けることができるそうです。
「しっかり学びたいけどあまり時間がない」という方にオススメなのは、「大学の開放授業講座(リカレント教育)」です。これは、県内在住の55歳以上の人を対象として、埼玉県が行っています。
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0603/4-rikarento.html
提携している大学の授業を学生と共に受けられます。
自宅近くの講座・講習を調べたいときは、埼玉県教育委員会ホームページ内にある大学・短期大学の一覧ページが便利です。
https://www.pref.saitama.lg.jp/f2215/station/university-open-lecture.html
<地域デビュー楽しみ隊隊員:石井清二さん>
実際に大学の開放授業講座を受講している、埼玉県「地域デビュー楽しみ隊」の隊員、石井清二さんにお話しを伺いました。「地域デビュー楽しみ隊」とは、アクティブシニアの方々の地域デビューを後押しすべく、結成されたグループです。
http://kyojo.saitamaken-npo.net/tiikidebut/index.html
石井さんが受講している開放授業講座は、日本薬科大学(伊奈町)の「栄養と健康」という授業。
石井さんは3年ほど前から公民館で太極拳を習っておられ、もうすぐ初段試験を受験するというほど打ち込んでいます。その太極拳での体作りとこの講座がマッチしていて、勉強になるとのこと。
開放授業講座を受講したきっかけは、市民活動の仲間で80歳代の女性から誘われたことでした。
今でこそ活動の幅が広い石井さんですが、長年勤めた会社を定年退職後、若い人と話す機会がなくなり、物足りなさを感じていたそうです。そんな石井さんが仲間に誘われて参加したこの授業は、刺激的だったとか。
「授業の中で学生さんのレポートを聞く機会があったのですが、今の学生はインターネットや本で調べたものだけでレポートしているように感じることがありました。もう少し追求してみると良いかも......と思ったり、実際に意見を交わしたりと、現代の学生を知る機会にもなっています」とのこと。
同じ立場で講座を受講している方とは、学食でランチをとることもあるそうです。「同じ場所で、同じ空気を吸う。人との交流には、これがとても大切です」と、笑顔で話してくださいました。大学事務職員の方と仲良くなり、模擬試験の患者役ボランティアに誘われたそうで、12月には2度目の出番がありました!
「開放授業講座は最新の情報を知ることができ、同じ関心をもつ仲間と出会え、ドキドキ・ワクワクの時間です。若い世代のファッションも毎回気になります」という石井さん。別の大学でも講座を受けてみようか検討中とのことで、キャンパスライフをとても楽しんでいるようでした。
楽しく受講を続ける秘訣は「家の近くの大学に通うことと、仲間をつくること!」。
地域デビュー楽しみ隊隊員として、開放授業講座で学んだことや打ち込んでいる太極拳など、健康に関する知識をたくさんの人に伝えていきたいと考えている石井さん。「伝えられる人となるよう、もっと学びを深めていきたいと思う」と、意気込みを語ってくださいました。
<地域デビュー楽しみ隊隊員として活動中の石井さん(右) 画像提供:埼玉県共助社会づくり課>
<朗読講師:上田あゆみさん撮影協力:茶房平>
会社勤めしていた50代の頃、ふと「このまま定年を迎えた私は、いったい何をしているのだろう」と考えたという上田あゆみさん。ボランティア活動に興味を持ち、色々なボランティアを調べたものの、「自分のできること」を考えるといまひとつピンと来なかった。
そんな上田さんの目に飛び込んできたのは、「朗読ボランティア」でした。
そんな時、獨協大学オープンカレッジの折り込みチラシで「朗読講座」があることを知った上田さんは、「勉強してみよう」と、受講することを決めました。
オープンカレッジで学んだことで朗読に魅了された上田さんは、半年の講習を終えた後、さらに朗読の世界を極めようと職場近くの専門講座を受講。その後会社を早期退職し、「朗読講師」として活動を始めました。
「オープンカレッジで学んだ半年が、今の活動のきっかけとなっているのは、間違いないです。当時講師に、オープンカレッジ講座修了後のさらなる学びを相談し、職場近くの専門講座受講も後押ししてくださいました」と、当時のエピソードを、懐かしむように教えてくださいます。
「オープンカレッジ受講中は受講者同士で、飲みに行ったりしましたね」と、同じ学びをする仲間との交流も楽しみの一つ。当時受講者最年少だった上田さんにとって、人生の先輩方が、色々な想いで受講されているのだと感じたそうです。
数ある朗読講座の中で大学のオープンカレッジを選んだ理由は、獨協大学が家から近く、土曜日に開催されていたから。会社勤めをしていると平日昼間に開講しているカルチャーセンターは受講できませんが、近所で週末に学べるのは社会人にとってはありがたいこと。
今は一般社団法人日本朗読検定協会の認定講師として、地元草加市を中心に、埼玉県全域で講師活動を行っているそうです。
<講師として活躍の様子画像提供:上田あゆみさん>
協会主催の朗読ステージの実現や、新人作家のショートストーリーを発表するイベントを計画中ということで、ますます朗読への想いが拡がっています。
大学のオープンカレッジで学んだことがきっかけとなり、朗読の楽しさを地域に広める活動へと発展した上田さん。この活動を通して地域との交流が拡がっており、オープンカレッジが未来を膨らませる可能性があることを教えてくださいました。
<画像提供:獨協大学>
大学開催の市民公開講座を受講されている方、受講後にそれを活かして活動されている方、お二人に共通しているのは、講座受講を通して仲間との交流をもち、通い続ける意欲に繋がっていること。
筆者の母もダンスの講座に通っていたのですが、膝を痛めて休講したことがあります。その3年後に仲間の方から「そろそろ、できる範囲で復活しませんか」とお誘いを受け、受講を再開しました。
今では、「大学生と一緒に踊る機会は、なかなかないので楽しい」と、毎週生き生きと通っています。
学びがどのような形に発展するかは人それぞれですが、生きがいを持ち続ける姿は素敵なものです。
「仕事に代わる、新しい居場所を見つけよう」と言っても、きっかけはなかなかつかみにくいもの。まずは、今だからこそ学んでみたいと思うものに踏み出してみませんか。
独りでは続かないことも、仲間が一緒なら続けられるという声も聞きます。
また、学んだことは還元したくなるもの。いきなり活動に飛び込むよりも、学びを還元する先という意識でさがしてみると、自分にぴったりな活動が見つかるかもしれません。
皆さんも大学の市民公開講座を活用し、学びを深め、自分の居場所を探し、仲間を見つけてみませんか。
筆者:旅するパフォーマーyouyou