ホーム > 埼玉人生100年時代の楽しみ方研究所 > 笑いのある生活が病気のリスクを減らす!? 人との関わりで健康に!
まるで迷信のような話が、実は本当だったとしたら驚きますよね。
近年「笑い」と「健康」の因果関係について、さまざまな角度から研究・考察が行われており、興味深いデータが多数発表されています。私たちの生活や健康に、「笑い」がどのように関係しているのかを調べてみました。
毎日を笑って過ごせるのは、とても素敵なこと。みなさんはどのようなことで笑っているでしょうか。
富山国際大学現代社会学部の大谷孝行教授が、富山県内で10~70代以上の男女にアンケート *1) を行った結果、笑いを取り入れるために必要なものとして最も多かったのは「人との会話」(82%)、次いで「テレビ」が 75%でした。なお、どの年代においても「人との会話」が「テレビ」を上回る、という興味深い結果も出ています。
この結果を見てみると、笑いの基本は人との会話にあり、日常の笑いにプラスしてテレビのエンターテイメントを利用していると考えられます。
このことは、同調査内(複数回答可)の「最近一番大笑いをしたこと」の回答でも同じ傾向がみられます。回答上位は、「テレビを見て(120人)」が最も多かったものの、次いで
「(ひ)孫との会話・(ひ)孫の言動(110人)」
「友人との会話・友人の言動(101人)」
「子どもとの会話・子どもの言動(96人)」
「家族との会話(41人)」
「人との会話(30人)」
と続き、笑いにあふれた生活を送るためには、「身近な人との関わり合い」が欠かせないということがわかります。
加えて、少々気になる回答結果がありました。それは、「最近3日間で笑った回数」の結果です。どの年代も「3日のうちで10回以上笑った」と答えた人の割合が最も多かったのですが、50代の62%に比べ、60代は41%。大きな差異があったのです。
別の調査によると、笑う機会が少なくなるというのは健康的なリスクがあるようです。
その研究結果を見てみましょう。
東京大学大学院医学系研究科の近藤尚己准教授の論文 *2) によると、日常生活で「ほとんど笑わない」高齢者は、「ほぼ毎日笑う高齢者」に比べて、脳卒中になる割合が約1.6倍高く、心疾患は約1.2倍高かったのだそうです。
2つの調査を総合すると、笑いの回数が減っているシニア世代がより健康的に過ごすためには、人との交流ができる趣味や身近な地域の活動などに出かけ、笑いの回数を増やすことが大切だと分かります。
2011年に発表された研究結果 *3) によると、笑いによって以下のような効果が見られたという考察もあります。
また、国内外で発表された「笑いの精神的な効果」に関する報告では、ストレスの軽減や抗うつ作用などの報告が上がっているという結果も見られます。
日本には古くから、「病は気から」「笑う門には福来たる」といった、気の持ちようによって病状が回復したり、笑うことで幸運が訪れたり、明るく前向きな気持ちが大切だという言葉があります。これらの報告文を見ていると、それらは単なる迷信ではなく、本当に効果が期待できるのかもしれません。
上記にもある通り、笑う機会を増やすには人との関わりが欠かせません。
地域の広報紙やホームページ等に掲載されているイベントに参加したり、テレビやDVDを見る時は友人や家族と一緒に鑑賞したりするなど、まずはすぐにできることからはじめてみましょう。
同じテレビを見るにしても、ひとりで見るより人と一緒におしゃべりをしながら見る方が、数倍楽しいと思いませんか? それは、ひとりで食事をするより、誰かと一緒に食事をした方が美味しく感じるという感覚に近いのかもしれません。
埼玉県では、『埼玉人生100年時代の楽しみ方研究所』というWebサイト様々な情報が得られます。お住まいの市町村の情報発信の窓口も紹介しています。
笑いが身体に与える影響など、詳しいメカニズムの解明には引き続き研究が必要とのことですが、「笑い」と「健康」の研究は、私たちが健康に過ごすための重要なヒントがちりばめられています。
「笑うと身体に良いらしい」「人と関わると笑顔が増えるようだ」と気軽に捉え、まずは「3日で10回以上」笑うことを意識してみてください。行動した結果、何も変わらなかったとしても失うものはありません。
すべては小さな最初の第一歩から! 地域活動で人と出会い、たくさん笑って健康な日々を送りたいものですね!
【参考文献】 以下最終閲覧日 2019年7月25日
*1) 大谷孝行(2019.03)「続・富山県民の笑いに対する意識調査」『富山国際大学現代社会学部紀要第11巻第2号』(有効回答数1,502)
https://www.tuins.ac.jp/library/pdf/2019gensha-PDF/201903-08otani.pdf
*2) 近藤尚己(東京大学大学院医学系研究科)「笑わない人は脳卒中リスク1.6倍増」『日本疫学会専門誌 Journal of Epidemiology』(2016)
65歳以上の高齢者20,934人を対象に笑いの頻度と心疾患または脳卒中との関係を分析。BMIや高脂血症、高血圧、うつなどの影響を調整しても、変わらない割合の数値が出た。
https://www.jages.net/pressroom/?action=cabinet_action_main_download&block_id=967 &room_id=919&cabinet_id=20&file_id=3357&upload_id=3963
*3) 三宅優・横山美江(大阪市立大学大学院看護学研究科)「看護ケア領域における笑いの有効性に関する文献学的考察」『日本看護科学会誌』 J. Jpn. Acad. Nurs. Sci., Vol. 31, No. 3, pp. 61-67(2011)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/31/3/31_3_3_61/_pdf
川添道子