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今の自分だからできる!地域社会の豊かさにもつながる起業

©miya227

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今の60~70代の男女が20~30代の現役時代は、「会社のために頑張る」「育児や家事が最優先」ということが当たり前。そのおかげで今の日本があるわけですが、一方で、「自分が本当にしたいことは何なのか」「自分は何に興味があるのか」などと考える時間がなかった、という人も多いのではないでしょうか。

時間がない状態というのは、良くも悪くも深く考える時間が持ちづらいもの。定年後、いざ自分の人生を振り返る時間ができてくると、新たな道に気付ける人もいれば、「何もすることがない」と塞ぎこんでしまう人もいます。

ただ一つ言えることは、何十年と生きてきた人生で培った経験と知恵は、定年退職をしても財産として確実に自分の中にあるということ。歳を重ねたからこそ、今度は「地域社会」に視点を広げてできることがあるはずです。

とはいえ、

「どうしたらいいのか分からない」

「やりたいことが見つからない」

という声はあちらこちらから聞こえてきます。探し方を知れば、世界が広がるでしょう。

今のあなただからできること、そして、あなたの周りの地域社会の豊かさにもつながる起業の仕方を今回はご紹介したいと思います。

まずは勉強! 起業に必要な知識を取り入れよう

令和元年度、埼玉県が実施している社会起業家育成プログラム(40歳以上が対象)では、全8回のカリキュラムが組まれており、地域の社会課題を解決するための起業にむけて必要なノウハウを多様な講師が講義をしてくれます。

社会起業家育成プログラム

http://kyojo.saitamaken-npo.net/event/010624seminor100kokuchi.html

第1回は令和元年8月24日に、新都心ビジネス交流プラザで行われました。私が見学させていただいたのは、令和2年1月に行われた第6回。

第6回は座学だけではなく、これまでの講座を踏まえて「自分がどんなことをしたいのか」を考えて具体化し、受講生同士で自分のプランを発表。それに対してコメントをするということが行われていました。

すでに6回目ということもあり、細かな起業内容まで決めている人もいれば、「何となくだけど、こんなことがしたい」という感じで大まかなイメージ段階の人もいました。

様々なレベルの人が一緒に参加しているので、それも良い刺激になっているようです。

受講生の人にお話を聞いてみると、受講生同士で知り合いができ、講義後はカフェでお茶をしたり、お酒を飲みに行ったり、講義以外の時間も楽しまれているようです。中には連絡先を交換して、講義のない日に改めてお茶に行くこともあるとおっしゃっていました。

こういう場所で横のつながりを作ることも、起業するためには大切なことと言えるでしょう。

社会起業家育成プログラム受講者高橋さんにお話を伺いました

インタビュー:高橋氏

高橋さんは58歳でJR東日本を退職し、個人事業主として起業されています。退職後間もない頃は家にいることが多かったそうですが、ぼんやりと「人が集まって食事をする場所を作ることができればいいのになあ」と考えていたのだとか。

社会起業家育成プログラムの第1回から参加しておられ、その時に一緒の班で話した人たちとは、プログラム講義以外でもお酒を飲みながら議論をしているのだそうです。

その中で見えてきたのは、シニア世代が感じる2つの不安。

1つは漠然とした老後の不安。

この先、どうしていけばいいのかが見えていないため、健康のこと、お金のこと、介護や医療費のこと。さらには1人暮らしの孤独についてなど、様々な不安を持っている。皆それぞれ状況は違えど、「不安」を感じるということは一緒だということです。

もう1つは「集まる場所がない」ということ。

会社に勤めていた頃は、会社に行けば自分の居場所があり、話をする人が当たり前のようにいましたが、退職すると行く場所がないため、話す相手が自然と減っていくようです。「皆、集まる場所を探しているのだということが分かった」と、高橋さんは話してくださいました。

それは、高橋さんご自身が感じていた気持ちと同じでした。他のシニア世代の人も、気兼ねなく集まることができて、自分の得意なことを発表できる場が欲しいという気持ちがあります。得意なことといっても仕事に限らず、料理が得意なら料理、音楽が得意なら演奏、絵を描くのが得意なら個展を開く、というように、趣味の範囲で良いのです。

©polkadot

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同年代の人たちから話を聞くことができたことも、社会起業家育成プログラムに参加したメリットの一つなのだそうです。

高橋さんが「気軽に人が集まれるコミュニティを作りたい」と言うと、社会起業家育成プログラムで出会った人たちが賛同してくれ、そのアイディアを実現させようと、より一層強く考えるようになったのだとか。高橋さんは色々な企画を考え始めましたが、その中で最も大事なことは、1人で考えて実行するのではなく、人と人が協力し合って何かを始めるということ。

1人の力では限界があるものの、他の技術や資源を持った人と一緒に組むことで、実現が難しかったことも可能になると気づいたとおっしゃっていました。

社会起業家育成プログラムでは受講生同士のつながりもできやすいということで、40歳以上に限らず、学生も参加OKにしてみればおもしろいかもという高橋さん。他の場所で行われたビジネスコンテストのファイナリスト発表を聞きに行くと、15人中5人が高校生や大学生で、それも大いに刺激になるとおっしゃっていました。

様々な年代の人とのコミュニケーションは、視野を広げ、想いを実現させる一番の近道なのかもしれません。

お金をかけずに身の丈に合った起業をする

多くの方にとって、「起業」とは何だかハードルが高いことのように感じてしまうかもしれません。「成功すればいいけれど、失敗すると大損失を負ってしまうのでは?」「この歳になって起業なんて......」とあきらめてしまっていませんか?

しかし、お金をかけずに起業する方法もたくさんあります。低リスクで起業することも可能ですし、シニア世代が起業する意義も大いにあります。

高橋さんのお話にもあったとおり、シニア世代の大きな悩みの一つが「居場所のないこと」。定年退職前は職場や子どもを通してのお付き合い、学校のPTA活動など、自然と居場所が作られていました。しかし定年後は「家しかいる場所がない」ということになってしまいます。

趣味や習い事をしている人であれば、趣味仲間や習い事仲間などの居場所があるかもしれませんが、現役時代に忙しくしていた人ほど、趣味の時間を持てず、定年後いざ時間ができた時にどこに行ったらいいのか、何から始めたらよいのかがわからなくなってしまうのです。

そういった人こそ、これまで培ってきた経験や技術をいかし、自分の興味がある分野で起業を考えてみてはいかがでしょうか。人生に目的ができ、毎日の生活にメリハリがついて、第二の人生がさらに楽しくなるでしょう。

たくさん稼ぐことを目的にした起業でなくて良いのがシニア起業の良いところ。だからこそ、人の役に立つことを一番に考えることができますし、それが周りの地域社会の豊かさにもつながっていくのです。

最初は勇気がいるかもしれませんが、埼玉県には創業支援をしてくれる専用窓口があります。まずは問合せをしてみるところから、あなたも一歩を踏み出してみませんか?


参考リンク(外部サイトに移動します)

  • 埼玉県よろず支援拠点ー公益財団法人埼玉県産業振興公社
    https://www.saitama-j.or.jp/kikaku/yorozu/
    よろず支援拠点とは?
    経済産業省・中小企業庁が、全国47都道府県に設置する経営なんでも相談所です。
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ライター:岩本和代