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頼れる人がそばにいなくても...「生活満足度」が高い人の特徴とは?

©polkadot

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孤独が心身に与える影響については、国内外で多くの研究結果が発表されています。

英国で「孤独担当大臣」が置かれたことからもわかるように、「孤独は社会問題」という認識は国内外に広がり始めています。

でも、「自分が孤独であるかどうか」を判断するのはとても難しいものです。

1人暮らしでも生活に満足している人がいる反面、たとえ家族がいても孤独を感じる人もいるからです。つまり、孤独かどうかを決めるのは、自分

そうはいっても、私たち日本人にとって見過ごせない調査結果があります。

「頼れる人が家族以外にいない」割合が高い日本

4か国の60歳以上の男女を対象に行われた『第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果』では、「病気の時や、一人では出来ない日常生活に必要な作業が必要な時、同居の家族以外に頼れる人がいるか(Q29)」という質問が設けられました。

その結果、「頼れる人がいない」の割合は、日本が調査実施国中で最も高いという結果になってしまったのです。

さらに、頼れる人として「近所の人」(18.3%)や「友人」(18.5%)と回答した割合が最も低いのも日本でした。

日本が他の3か国と比べてとりわけ低かったのが「友人」と回答した割合で、ドイツ、アメリカ、スウェーデンが4割を超えているのに対し、日本ではその半分以下に落ち込んでいます。

「近所の人」と回答した割合も日本が最も低く、日本では、家族以外の人たちとのつながりが希薄な傾向が見られます。

「生活の満足度が高い人」に共通するのは?

「頼れる人がいない」という状況が、必ずしも生活の質と直結するわけではありませんが、内閣府の『満足度・生活の質に関する調査』を参照すると、頼れる人がいるかどうかは、生活満足度に大きな影響を与えていることがわかります。*2)

なぜなら、「頼りになる人がいない」人は生活の満足度が低く、頼りになる人が増えれば増えるほど、生活の満足度が上がる傾向が見られたからです。

また、女性と比べて男性のほうが「頼りになる人がいない」と回答した割合が高くなっています。

シニア男性が現役世代の頃は、仕事を最優先して会社組織で濃密な人間関係を築いていた一方で、仕事以外の人間関係を築く余裕がなかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そういった男性の中には、定年で仕事を辞めてから、心にぽっかりと穴が開いたような虚無感や孤独にさいなまれるケースもあるようです。

退職後に孤独と喪失感にさいなまれた「私」が元気になった理由

浜宮隊員

<地域デビュー楽しみ隊:浜宮隊員>

現在、埼玉県の「地域デビュー楽しみ隊」の隊員で、アマチュア落語家として活躍している浜宮文博さん(70歳)は、退職後に喪失感や孤独感にさいなまれ、苦しんだ1人

勤めていた企業の雇用延長の期間を終え、62歳で退職をした後は、自分の存在意義について自問自答する日々が続いたと振り返ります。

仕事をやめて自由になったことの喜びはもちろんありました。責任感から解放されて、毎日朝寝坊してもいい。

それなのに、自分がいなくなっても社会がちゃんと動いていることに疎外感や強烈な孤独を覚えるようになりました。その後、無気力な状態に陥り、1人で読書ばかりする日々が続きました」(浜宮さん)

これまで会社の中で与えられていた役割を失うことで、自分の価値まで失ってしまったように感じていた浜宮さんは、本の世界に没頭する日々がしばらく続きます。

ところがその後、偶然にも地元の映像制作のクラブの存在を知り、家族に強く背中を押されたことで、しぶしぶ参加をすることに。

せっかく会社の組織から解放されたのに、また新しい組織に入るのはもちろん抵抗がありました。グループに入るということは、役割を与えられ、また責任感に縛られるということ。きっと、定例会議なんかがあって、面倒な人間関係も発生するかもしれない。自分と合わない人だっているかもしれない......。こんな不安も胸に押し寄せてきました

それでも思い切って参加してみると、メンバーと一緒に動画制作をすることにやりがいを見出すようになり、少しずつ日常生活の楽しさを取り戻していきます。

そして、次第に若い頃から大好きだった落語にもチャレンジしたいという思いがわきあがってきたそうです。

一念発起して落語の講座を受けた浜宮さん。今では地域の介護施設や、高齢者向けの住宅で、落語を披露するボランティア活動にも挑戦しました。

「もちろん失敗することもあるけど、お客さんに喜んでもらえるのがとにかくうれしくて。最初のうちは覚えたセリフを忘れないかどうかいつもドキドキしていたのですが、今は観客のリアクションを見る心の余裕も出てきました」

今では、講座や寄席を通じて、様々な年代の人たちとの交流を楽しんでいます。最後に、定年してからの日々を振り返って、今の心境をこんな風に語ってくれました。

「退職して無気力になっていた頃は『自分はなんのために生きているんだろう』と思っていました。衣食住は満たされているのに、なぜ心は満たされないんだろう、と

いろんな本を読んで、いろんな人たちに会って、わかってきたのが、私にとっては誰かを喜ばせることが大きな喜びになるということでした

落語を続けてみると、真打がいかにすごいのかわかってくるんですよ。今はもっと上手になっていろんな人を喜ばせたいという気持ちがみなぎっています」

共同作業や誰かの喜びが、生きる糧になることも

©MonkeyBusiness

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会社での役割や人間関係を失った喪失感に苦しんだ後、地域の仲間との共同作業や、誰かの喜ぶ顔によって日常生活が一気に楽しくなったというという浜宮さん。

実際、前出の調査では、たとえ頼れる人いなくても生活満足度が高い人には「生きがいや趣味がある」「ボランティアの頻度が高い」という傾向が見られます。*2)

「誰かとつながっている」「人の役に立っている」「好きなことを楽しんでいる」という実感は、生活の満足度に影響を与えているようです。


【参考文献】以下最終閲覧日 2019年7月25日

*1)平成27年度第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果(P42)

https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h27/gaiyo/pdf/gaiyo_2of2.pdf

*2)「満足度・生活の質に関する調査」に関する第1次報告書 - 内閣府(P10,P19)
https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/report01.pdf


筆者:北川和子