ホーム > 埼玉人生100年時代の楽しみ方研究所 > 「読書 = 孤独で動かない趣味」は大きな誤解! イキイキシニアと読書との関係とは?
@slavun
「現役時代は通勤が運動がわりだったが、定年後は家でじっとしていることが多くなってしまった」
「趣味と呼べるようなものは特にない」
定年した方からは上記のような声が聞こえてきますが、健康的な生活や、生き生きとした日々に「読書」が寄与するとすればどうでしょう。
「読書なら自分にもできる!」という人は多いのではないでしょうか。
実際、平成28年総務省の調査 *1) では、65歳以上の方の趣味として「読書」が堂々の2位にランクイン。「園芸・庭いじり・ガーデニング」に次いで、日本に根付き、広く愛されている趣味が「読書」なのです。
出典:統計からみた我が国の高齢者(65 歳以上) - 総務省 14ページ
@eggeeggjiew
読書は体を動かさないため、「健康とは関係のない趣味」という印象があるかもしれませんが、そうとも限らないようなのです。
2018年に放送されたNHKスペシャル、『AIに聞いてみたどうすんのよ!? ニッポン』*2) では、高齢者41万人のデータをAIが解析。その結果、「健康で長生きする人が全国1位」の山梨県で、読書を軸に活動するシニアが元気であるということがわかりました。
山梨県は「運動・スポーツ実施率全国最下位」なのですが、人口あたりの図書館の数は全国一。
「身近な場所に図書館がある = 普段からバスや歩きで図書館に通いやすい」ということが言えそうです。また、番組内の取材では「(図書館内をよく歩くため)本を探すことでいい運動になる」という声もあり、読書が体を動かすきっかけにもなっているようです。
地域活動をするシニアは介護費が低い、転倒しにくいなど、地域活動の利点が知られてきています。イギリスで行われている加齢・老化に関する縦断研究 *3) でも、定年退職後、なにかしらのコミュニティに所属し続けた人は、そうでない人と比べ、退職後6年間での死亡率が低かったという研究結果があります。
<出典 Social group memberships in retirement are associated with reduced risk of premature death: evidence from a longitudinal cohort study - BMI Journals(6ページ、筆者翻訳)>
一般的に「読書はコミュニティとは関係なく、一人でするもの」というイメージがあり、長生きや健康の面では他の趣味よりも不利だと感じるかもしれません。
果たして、本当にそうでしょうか?
冒頭でも紹介したように、読書は日本人の趣味第2位。つまり、本好きの人は身近にたくさんいるということです。「読書仲間」とつながる場は意外とあちこちにあるのかもしれません。
読書仲間がみつかれば、良かった本をシェアしたり、感動したことを話し合えたりと、読書にも張り合いが出てきます。おすすめした本を他の人が読んでくれ、「面白かった!」「役に立った」と言われると嬉しいですよね。
本を人に紹介する職業「本ソムリエ」なるものもあるくらいで、自分では手にとらないような本との出会いは楽しいものです。
読書仲間とのコミュニティに参加することで、家から出る機会も増えるでしょう。
星城大学リハビリテーション学部、竹田徳則氏の調査 *4) によると「外出しない人は物忘れ、生活機能低下などのリスクが2倍になる」という結果もあり、逆にいえば、本をきっかけに外へ出ることで脳も体も活性化させ、若さを保つ秘訣にもなりうるのです。
<出典:星城大学リハビリテーション学部プレスリリース>
気軽に参加しやすい「本」を通じたコミュニティとしては、読書サークル、朗読サークルなどがあります。他には、この10年あまりで急速に注目を集めている「ビブリオバトル」*5) という取り組みも。京都大学のゼミから始まり、大学生を中心に広まってきたのだそうです。
ビブリオバトルは「知的書評合戦」ともいい、面白いと思った本を紹介し合い、その場で「最も読みたくなったチャンプ本」を決めるイベントです。自分の紹介を聞いて、「読みたい」と思ってくれた人の数でチャンプ本を選出。紹介者の話が上手いかどうかではなく、どの本が一番読みたくなったかが決め手です。
最近は大学生だけでなく、中高生をはじめ、地域のイベントなど、さまざまな年齢の人を対象に開催されています。埼玉県でも「R40 大人のビブリオバトル in 埼玉」 *6) と銘打って、12月まで予選会を開催中、1月には決勝戦が行われます。
@D&Y 坂口
年齢を重ねるほど、これまで読んできた本の数や幅、豊富な知識が武器になりますので、楽しみで長年読書を続けてきた方は活躍のチャンスです!
ビブリオバトルの醍醐味は、チャンプ本に選ばれることだけではありません。たとえチャンプ本に選ばれなくても、自分の書評がたくさんの人の耳にふれることで、自分の「あの」お気に入りの本が、誰かに「読みたい」と思ってもらえ、誰かにとって新しい本との「出会い」が生まれたら、素敵ですよね。
実際に、「(チャンプ本にはならなかったけど)あなたの勧めた本が一番読みたくなりました!」と会話している様子も見受けられ、交流の輪が広がっているようです。
とっておきの本を思いついたという方は、ぜひ埼玉県庁のWebサイトをチェックし、予選会にエントリーしてみてください。「そこまでは勇気がでないけどイベント自体は気になるな」という方は、「観覧者」という形で見学、投票してみるのもよいでしょう。
そのほかにも、図書館めぐりはいかがでしょう。
埼玉県には以下のように、特徴的な図書館が充実しています。
図書館は本を見る・借りるだけの場所だけではなく、出かけてみたくなる魅力的な場所として捉えなおすことができますね。
ほかにも、本を通じた魅力的な場所、素敵な出会いがありそうな事例を御紹介します。
また、「Swap shop(物々交換ショップ)」といって、不用品を無料で交換し合うイベントが定期的に行われている地域も多く、本ももちろん交換の対象。読み終わった本、ホコリをかぶっている本を近所の人と交換する場なら、私たちにも簡単に作れそうですね。
このように、ちょっと調べてみるだけでも、「読書」をテーマに活動する機会や場所、アイデアはこんなにたくさん! 読書という趣味を見る目が変わりそうです。
「本めぐり」をテーマに出かけてみると、たくさん歩くことになるだけでなく「次はあそこに行きたい!」という別の楽しみも加わり、一石三鳥!
家から一歩出るきっかけは趣味の読書からでも。新しい本や人との出会いで世界が広がり、毎日がもっとイキイキと、楽しくなるかもしれません!図書館に立ち寄って、館内を見渡してみるとイベントや講座のご案内もあります。そして近くに市民活動センターや公民館があれば、気軽に参加できるイベントやコミュニティの情報も得られます。
【参考】以下最終閲覧日 2019年11月10日
*1) 出典:『統計からみた我が国の高齢者(65 歳以上)』 - 総務省
https://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topics103.pdf
*2) 出典:『AIに聞いてみたどうすんのよ!? ニッポン』 - NHKスペシャル
https://www.nhk.or.jp/lifestyle/article/detail/00692.html
*3) 出典:BMJ Journals
https://bmjopen.bmj.com/content/6/2/e010164
*4) 出典:竹田徳則/星城大学リハビリテーション学部プレスリリース(2011)JAGESプレスリリースNo11-020
「外出・買い物・料理・園芸・スポーツしないと認知症リスクが約2倍」
https://www.jages.net/pressroom?action=cabinet_action_main_download&block_id=454&room_id=919&cabinet_id=15&file_id=75&upload_id=218
*5) 知的書評合戦ビブリオバトル公式ウェブサイト公式ルール
http://www.bibliobattle.jp/koushiki-ruru
http://kyojo.saitamaken-npo.net/event/otonanobiblio.html
https://kataguruma.crayonsite.com/p/2/
*8) 「本電話ボックス」の検索結果
https://www.google.com/search?sxsrf=ACYBGNSSclhxG-xVYOWJ0ZuMlgx5A4ruYw:1569033644074&q=%E6%9C%AC%E3%80%80%E9%9B%BB%E8%A9%B1%E3%83%9C%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9&tbm=isch&source=univ&sxsrf=ACYBGNSSclhxG-xVYOWJ0ZuMlgx5A4ruYw:1569033644074&sa=X&ved=2ahUKEwjtpPvn8eDkAhVOPHAKHfpZBlAQsAR6BAgJEAE&biw=1024&bih=528
筆者:広田理晶