ホーム > 埼玉人生100年時代の楽しみ方研究所 > 「こんなはずじゃなかった」を回避!?秘訣は意外と手軽な地域デビュー
人生100年時代と言われるようになりましたが、定年後を表す言葉として、「老後」というよりも、「第二の人生」と言ったほうがしっくりくるのではないでしょうか。
誰しもが生きがいのある、健康で楽しい第二の人生を望んでいますが、いざ定年してみると、
という人も多いようです。
近年の研究により、生活における「環境」 が健康に大きな影響を及ぼすことが明らかになりつつあります。
やっと手に入れた「第二の人生」。その努力の賜物が、「こんなはずじゃなかった」とネガティブなものにならないようにするためには、どんな環境があるといいのでしょうか。
周囲から孤立することが不健康につながるという説が、たびたび報道されています。一方、地域社会とのつながりがある人は、そうでない人と比べて健康リスクが低いこともわかってきています。
周りの人との交流が、心の健康にどう関連しているかを調べた研究 *1) をみてみましょう。シニア世代において、「精神的健康が良好」と答えた人は全体の65.8%。さらに以下のような結果がでていました。
本研究では、以下のような見解も記されています。
『同世代との交流(世代内交流)は,年齢などの社会的背景が近い者に相談するため,自身が抱えている問題や感情をより深く理解し,共感してもらうことでストレスの軽減につながる可能性がある。一方,異なる世代との交流(世代間交流)では,異なる視点からの問題解決方法を教示してもらうことによって,早期の問題解決につながり,ストレスを軽減できる可能性がある。』
あなたにも、定年後も大切にできる、家族以外のコミュニティーはあるでしょうか。
日ごろはあまり意識しないかもしれませんが、会社で仕事をしていると、それだけで社会とのつながりができています。
「毎日の仕事生活を早く卒業したい! 定年後が待ち遠しい」と思っていても、いざ定年退職をしてみると、家庭・会社以外に居場所がない人は社会とのつながりを失い、心と体に悪影響を及ぼすこともあります。
以下は「こころの健康が良好である確率」を表した研究結果 *1-2) です。家族や仕事関係の人以外との会話について、「よくある、ときどきある」と回答したものを「交流あり」として集計されています。
<図版提供根本裕太氏>
同世代との交流のみならず、世代を超えての交流もある人は、その他の人に比べて明らかに「こころが健康である」と言えます。
定年後は家庭のほかに、色々な世代の人と関わる居場所を持つことが重要ということですが、そうは言っても、初めから「仕事の代わりに、週5日!」と意気込む必要はありません。
例えば、こんな声もあります。
―自分の活動は週1回、都合によってはそれよりも少ないこともあるが、活動によって関わりのできた人と買い物等の日常生活で出会った時に挨拶や会話が生まれるようになった。今は、あちこちに会話の種がある―
「単純接触効果」と言って、私たち人間は、複数回会った人物に好感をもつという現象があります。人と良好な関係を築くためには、継続的な交流が望ましいことを踏まえると、身近な地域で活動することが大切だと分かります。
面白そう、簡単そうな地域のイベントに参加して、その中で続けられそうなものを選んで「ライフワーク」として継続していくとよいですね。
「地域交流」「地域活動」と聞くと、自治会への参加や祭事・ボランティア活動などで、たっぷり時間と労力を費やすイメージを持たれるかもしれませんが、短時間での参加も充分可能。
地域活動に参加している人の活動時間(1回あたり)を調査したレポートでは、地域活動1回あたりにかける時間は、1時間未満が大半であることが明らかになっています。頻度も1~3ヵ月に1日程度が大半。
地域活動に関する意識調査 *2)
「既存の組織で行っている活動に1人で踏み入れるのはハードルが高い」という多くの声があります。
こういった気持ちは誰しも持っているものです。
まずは、外に出て、挨拶を交わす顔見知りをつくることが一歩になります。
会話を重ねるうちに、活動に誘われたり、一緒に何か活動してみようと話が弾んだりすることもあるでしょう。
他にも、Webサイトなどで、どんなイベントや活動があるかを探してみる方法もあります。
例えば下記のようなサイトで閲覧・登録ができます。
県内のボランティアやNPO活動などの相談や情報収集ができます。
また、シニア活躍サポートデスクが設置されており、地域デビューの相談を受けてくれます。
WEBサイトでは、初めの一歩を後押しする講座やボランティア募集情報を掲載している情報紙「彩サポだより」が掲載されています。
たまサポ(彩の国市民活動サポートセンター)
県が貸与するLEDライト付きウエストバッグを装着し、ランニングやウォーキング、犬の散歩等を行い、運動しながら地域を見守る。
http://www.pref.saitama.lg.jp/a0311/bouhansupporter/
子ども食堂や学習支援の活動では、様々な力を求めています。
食事作り、学習の指導だけでなく、家にある食材を持っていく、話し相手になる等、多様な参画の仕方がありますので、自分にあったものを考えるきっかけのために講座へ参加してみませんか。
無料で参加できます。
http://www.kenkatsu.or.jp/kouza/10106/
(9月に県内3か所で開催)
http://www.kenkatsu.or.jp/kouza/10162/
(10月に県内2か所で開催)
気軽にできて、健康にも役立つメリットいっぱいの地域交流。今まで足踏みしていた方も、新しい時代が幕を開けた今こそチャレンジしてみませんか。
埼玉県では地域デビューを応援する「地域デビュー楽しみ隊」といったチームが活動をしています。地域への参加に不安がある方、何から始めたら分からないという方はぜひ一度、地域デビュー楽しみ隊のフェイスブックものぞいてみてください。
https://www.facebook.com/tiikidebut/
【参考文献】以下最終閲覧日 2019年7月25日
*1)若年層と高年層における世代内/世代間交流と精神的健康状態との関連
(対象:東京都A区と神奈川県川崎市B区から無作為に抽出した65~84歳の3111人)
―日本公衛誌 2018;65(12)719-729
―原著根本裕太, 倉岡正高, 野中久美子, 田中元基, 村山幸子, 松永博子, 安永正史, 小林江里香, 村山洋史, 渡辺修一郎, 稲葉陽二, 藤原佳典
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jph/65/12/65_18-050/_article/-char/ja
*1-2) こころの健康が良好である確率
―原著根本裕太
・性、年齢、教育年数、婚姻状況、居住地域、婚姻状態、子/親/祖父母との同居、主観的経済状態、地域活動への参加、就労、健康度自己評価、日常生活機能、既往歴(脳卒中、心臓病)を考慮した解析。
・欠測値については、多重代入法により補完した。
*2) 地域活動に関する意識調査 ― 埼玉県庁
(対象:埼玉県在住の55歳~69歳の男女600人/方法:インターネット調査)
http://kyojo.saitamaken-npo.net/100lab/100lab-chousa.html
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