ホーム > 埼玉人生100年時代の楽しみ方研究所 > お金では買えない!「脳がイキイキ元気でいられる街の特徴」とは?
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皆さんは、子育てや仕事、介護から自由になったらどのような暮らしをしたいと思いますか?自分のペースでのんびりと暮らしたい、趣味を見つけたい、旅行をしたい......など、いろんな声があるのではないでしょうか。
どのようなライフスタイルであっても、人生を最後まで楽しむためには、やっぱり心も体も元気でありたいものです。さらに、毎日何かに感動したり喜んだりしながら、楽しい思い出をいつまでも記憶にとどめておくことができたら素敵なことですよね。
そのためには、体だけでなく、脳も若々しく保ちたいもの。
これからご紹介するのは、住んでいる人の脳が若々しく保たれる地域に見られる傾向についてです。
認知症のリスクを高める要因の一つと言われているのが「手段的日常動作」の低下です。
「手段的日常動作」というのは聞き慣れない言葉ですが、買い物、食事の用意、家計管理、服薬管理など、少し複雑なプロセスを要する動作のことを指します。この動作が低下すると、認知症のリスクが高まるのです。
千葉大学は、認知症のリスクになる「手段的日常動作の低下」と、「地域の社会参加・結束力・助け合い」がどのようにかかわっているかを調査しました。*1)
その結果、本人が参加するか否かに関わらず、社会参加の多い地域に暮らす高齢者は、少ない地域に暮らす高齢者と比べて、「手段的日常動作」が低下するリスクが10%も少なくなっています。
つまり、社会参加している人が多い地域に暮らすことは、自立した生活を送るための日常動作を維持することに有益ということです。
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同様の研究は他にも研究されています。
香港大学は、「地域の社会的結びつきが災害後の認知症進行を緩和する」という趣旨の論文を発表しています。*2)
災害という極限の状態において、環境の激変によって認知症が急速に進行する例は少なくありません。そんな時、社会的なつながりによって認知症の進行をゆるやかにするというのです。研究結果を見ると、地域全体の社会的結びつきが強い場合、その地域に生活し、被災した住民の認知症進行が緩和されることを示唆する内容となっています。
「地域のつながり」の大切さは分かりましたが、ゼロからどうやって手にしていけばよいのでしょうか。
まず、「地域のつながり」と言ったとき、分かりやすい例として多く方が思い浮かべるのが、「地域活動」ではないでしょうか。
実は、その参加率はあまり高いとは言えません。埼玉県が継続的に行っている「県政世論調査」*3)の最新の結果によれば、過去1年に地域社会活動に参加した60代以上男女の割合は約4割。
参加できていない理由としては、以下の通りでした。
【男性】
1位・・・仕事や子育て等により忙しく参加できない(24.8%)
2位・・・参加するきっかけが得られない(23.4%)
3位・・・興味がない(19.8%)
【女性】
1位・・・参加するきっかけが得られない(24.5%)
2位・・・仕事や子育て等により忙しく参加できない(18.4%)
3位・・・興味がない(16.5%)
若年層と比べて60代以上の男女は、忙しさを理由に挙げる割合が少なく、「きっかけが得られない」ことを理由に挙げている割合が他の年代よりも多くなっています。
地域のつながりを望みながらも、「地域活動への参加はハードルが高い」と感じている方が多いのかもしれません。
「地域活動」と聞いて自治会やボランティア団体による社会貢献活動をイメージすると、いきなり参加するのは大変そうな印象があります。
とはいえ、まず「地域のつながり」に焦点を当てて見れば、地域には"ゆるいつながり"から"親密なつながり"、"濃密なつながり"まで様々なつながりがあるでしょう。
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"ゆるいつながり"とは、例えば、家を一歩出ると、あいさつを交わす顔見知りがいて、久しぶりに会ったら「元気?」と会話をする相手がいて、「あそこに行けば、話し相手がいるかもしれない」という場所があること。
それでも最初は、ちょっと抵抗があるかもしれません。『埼玉人生100年時代の楽しみ方研究所』では、"ゆるいつながり"を生み出すきっかけを紹介しています。
実際にトライしている人のストーリーや、これを真似すればOKいうサンプル集が、合計11種類!1つ当たり3分程度で読むことができますので、是非ご覧ください。
実は、会話は素晴らしい脳トレとも言われています。ただ言葉を発しているのではなく、相手の表情やしぐさを見ながら、相手の気持ちを推し量って言葉を投げかけるからです。
個人商店や地域の公共施設、エレベーターや公園において。誰かと同じ空間を共有しているとき、季節の話をしたり、軽いあいさつをすることがきっかけで、思いのほか会話がはずみ、別の日に偶然出会うことを繰り返して顔見知りになっていくこともあるでしょう。
このように、あまり知らない相手と、会話をするだけでも、脳はいつもと違った刺激を受けます。
さらに、この"ゆるいつながり"を大切にすることで、何かのきっかけで"親密なつながり"に変わっていくケースもあるようです。
例えば、地域活動に誘われたり、共通の趣味を持っていることが分かって一緒に楽しむ機会を得ることもあるかもしれません。
事例:
会話が苦手だと思う方は、まずは文章を作ったり、SNSを使ったり、「本」という自分の関心のあるものを通じて発信するなど、必ずしも会話から始まらない活動を始めるのもよいでしょう。きっと、つながりの種まきになります。
事例:
地域のつながりで本当に大切なのは、小さなきっかけと"ゆるい絆"。
人と人とのつながりをコツコツと"貯蓄"することで、住んでいる場所も人もどんどん好きになって、「外に出て誰かと話したい」という気持ちが育まれるかもしれません。
【参考】以下最終閲覧日 2020年3月19日
*1)出典
千葉大学/社会参加の多い地域は認知症リスクが10%減/ JAGESプレスリリースNo: 174-19-8 2019 年5 月発行
https://www.jages.net/pressroom/?action=cabinet_action_main_download&block_id=2652&room_id=919&cabinet_id=174&file_id=3796&upload_id=5406
*2)出典
香港大学/地域の社会的結びつきが災害後の認知症進行を緩和 / JAGESプレスリリース No: 155-18-18
https://www.jages.net/pressroom/?action=cabinet_action_main_download&block_id=1900&room_id=919&cabinet_id=155&file_id=3566&upload_id=4917
*3)出典
http://www.pref.saitama.lg.jp/a0301/yoron/documents/yoron_2019_03nichijou_final.pdf
筆者:北川和子